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古いところなら純喫茶、ジャズ喫茶。 当世ならマンガ喫茶、インターネットカフェなど、 喫茶のあたまに名詞を冠する喫茶店がいろいろあるが、 これは目新しかった。 たまご喫茶である。 瑞浪で高速を降り、新緑に染まりながら走り続けて見つけた看板は たまごや喫茶らんらんだった。 なんだろう、たまご喫茶。 想像力、妄想力を駆使しても概要が浮かんでこない。 面白そうなものにはすぐ飛びつきたがる性格はいくつになっても変わらない。 行ってみよう。 駐車場から一段高いところに建つお洒落な三角屋根のドアを押した。 入るとすぐのところに山菜などと一緒に茶色のたまごが沢山入ったパックが 堆く並んでいた。 たまご屋さんがやっている喫茶店なのか、、、。 店内は明るく清潔感が漂っている。 壁には近くで咲く桜であろうか、 その絵と写真が控えめに飾られていた。 各々のテーブルの端にはカゴに入ったたまごが置いてある。 なんとなく気になって視線をチラチラ送っているところへ、 健康美ではちきれそうな娘さんが水を運んできた。 「ゆでたまごですので、ご自由にどうぞ」 わぁ、食べていい、ラッキー! ぷっくりとしたたまごを手に取ると、まだほんのり温かかった。 コンコンと先を割り、中から光沢のあるつるりとした白身が顔を出すと、 長時間車の中にいた閉塞感が溶けていく。 思いがけないオプションにウキウキしながら一口、二口食べていると らんらんの由来が理解できた。 らんらん、卵卵、そうかぁ、これだぁ。 うまいネーミングに夫と顔を見合わせて笑った。 ふと見上げるとたまごかけごはんの文字がある。 「すみませーん、コーヒーひとつにして、たまごかけごはんに代えてもらえますかー」 久しく食べていないたまごかけごはんに夫が食指を動かさないはずはあるまい。 夫の了承も得ず、注文を替えた。 店で働く娘さんは三人。 いづれも爽やかな上、きびきびしていて実に気持がいい。 「あのぅ、平谷村に出るにはこの道を行ったらいいんですよね、なんとなく不安になって」 地図を頼りにここまで来たものの、はっきりしたことを聞きたくて、 長野県でも南端近くに位置する平谷村への道筋を尋ねた。 「この先のトンネルを抜けたら右に行く道がありますよ、道も細くてもっと不安になるかも」 コーヒーを運んできた娘さんが笑って答える。 「うわぁ、どうしましょう」 娘さんのジョークと熱いコーヒーの香りが浮き立つ旅心を心地よく刺激した。 「ありがとう、たまごご馳走さま」 「また来てくださいね、気をつけて」 一旦、外に出たがまた引き返した。 「このお店のことをブログに書いていいですか」 「いいですよー」 新鮮なたまごを使ったシンプルなたまごかけごはんに満足した夫が、 ハンドルに手をかけて言う。 「また来たいのう、この店」 旅のとっかかりで味合ったたまごの美味しさと、娘さんたちとの小さな出会いが、 二人の心に沁みこんでいった。 いい旅になりそうな予感をもらって、赤い小さな車はトンネルをくぐって、進んでいく。 |
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